
スイスの出版社Atrabilから出ているBD。
いろんなところで推薦されていた作品だったので、読んでみた。
19歳の夏、フレッドは友達どうしのパーティーの席でカティに出会い、なんとなく引かれる。
数年後、友人宅と同じ建物内に住むカティに再開。チャンス到来と思いきや、カティは建物内の他の男性と結婚してしまう。
しばらくして、フレッドは、新年パーティーの席で一人ポツンとしているカティを見かける。今度こそちゃんと話しかけるチャンスをつかんだフレッドは、彼女が現在離婚して独りであることを知る。
この時を機に二人は急速に接近。
何回かデートを重ね、ある晩二人は、フレッドの自宅で夕食を食べる。楽しく会話をしながらおいしくご飯を食べ、テーブルにはある種の親密な空気が流れ始める。そして、カティはフレッドにある重大な告白をする。
簡単に言えば、カティとフレッドが一緒に暮らしはじめる、
ごくごく普通のラブストーリー。
ただ一つ、カティとその息子がHIV感染者であるということを除けば・・・
この話は、HIV感染者を取り巻くの社会的誤解を訴える話でもなければ、
感傷的で悲劇的な話でもない。
病気を抱えた親子と一緒に暮らす。
彼らを愛する。
彼らとの日常生活の中で発見すること、考えたことを綴る。
前向きに生きていく。
それだけの話。とてもシンプルなコンセプト。
でも、ページをめくっているいるうちに、実はとてもシンプルなことが一番大切なことなんだとヒシヒシと感じてしまう。なんだか胸がぎゅっと締め付けられて、涙がこぼれてきた。
あるとき、ベッドでフレッドのコンドームが破れてしまう。
すぐさま医者にアポを取り、心配で一晩眠れぬ夜を過ごすカティとフレッド。
翌日、ネガティブの検査結果を得てホッとする二人に、お医者さんは笑いながら言う。
「エイズに感染する確率は、この診療所を出た時に、ばったり白サイに出くわすくらいのもんです。」
比喩の意味を正確に把握しようと、二人はびっくりしたような表情で一瞬考える。
その時、二人の後ろには、同じようにびっくりしたような表情の白サイがたたずんでいる。
以来、フレッドの背後にはときどき音もなく白サイの幻影が現われ、スッと消える時がある。
ありふれた日常生活の風景にはあまりしっくりこない白サイの姿。でも、そんな白サイのいる情景を生活の一部として受け入れていこうとするフレッド。
愛です。
著者のFrederik Peetersのサイトはココ。真ん中の棚の下(Historiettes)をクリックすると、彼の絵の一部を見ることができます。

